プロクルステス。舌を噛みそうなこの名は、ギリシャ神話に登場する残虐な追い剥ぎのものだ。山間の街道筋で宿屋を営んでいて、旅人がやってくると無理やり特製のベッドに寝かせる。身長がベッドのサイズに合わないと、重しを付けて手足を引き伸ばしたり、足か頭を切り落としたりしたという。ベッドに身体を合わせるのが彼の流儀だ。軍隊のブラックジョークに「靴に足を合わせろ」というのがあるが、それと同じ基準。
神話世界の暴虐さは相当なものだが、21世紀に暮らす生身の人間に対しても、国家が似たような暴虐さを発揮している。社会保障審議会年金部会が「原則65歳」に向けて引き上げ途上にある年金支給開始年齢を、さらに68 ~ 70歳まで引き上げる案を検討しているというのだ。42.195キロと信じてマラソンを走っていたら、終盤で勝手にゴールの位置をずらされ、さらに再延長となるようなものだ。「財源が不足している」「元気な高齢者が増えている」というのが理由だそうだ。冗談じゃない。それでは「ベッドに合わないから」という追い剥ぎの理屈と、まったく同じではないか。年金を頼りに、つましくもじっくりと残りの日々に向き合いたい。そう考えているひとは多いはずだ。走る距離が長くなったために、受給の前に脱落、では何とも不条理。年金ベッドに合わせるために、寿命を延ばすわけにはいかないのだ。
2011年9月2日金曜日
“どじょう総理”の政治活動
新総理が誕生した。民主党代表戦の投票前演説は多くの議員の心をつかんだといわれる。現段階では世間でも好意的に見られているようだ。特に、詩人・書家の相田みつをさんの作品「どじょうがさ金魚のまねすることねんだよなあ」の引用は有名になった。相田みつを美術館には来館者が増え、作品を収録したダイヤモンド社の『おかげさん』は増刷が決まった。
しばらく経つと、「どじょうみたいに」などという言葉を頭につけて、「泥に潜って逃げるのか」「つかみ所がない説明ばかり」「2匹目を期待するな」「背骨がふにゃふにゃしている」などと揶揄されそうな気もする。ただ、金魚が飼われている水槽のようにはきれいとはいえない政治の世界で、泥臭い政治がどれほど効果を発揮するのか、しばらく見てみようと考えている。
しばらく経つと、「どじょうみたいに」などという言葉を頭につけて、「泥に潜って逃げるのか」「つかみ所がない説明ばかり」「2匹目を期待するな」「背骨がふにゃふにゃしている」などと揶揄されそうな気もする。ただ、金魚が飼われている水槽のようにはきれいとはいえない政治の世界で、泥臭い政治がどれほど効果を発揮するのか、しばらく見てみようと考えている。
2011年7月22日金曜日
「近代」を手繰り寄せた富岡製糸場の絹糸
金色堂で知られる平泉の中尊寺が世界遺産に登録されることになった。震災以降の数少ない明るいニュースに居ても立っても、大人しくはしていられない気持ちになって、最近1歳になった娘を連れて世界遺産の“候補”に挙げられる群馬の富岡製糸場へ行ってきた。
明治初頭に設置された富岡製糸場は、本邦初の官営製糸工場として日本の文明開化を象徴する建造物だ。赤レンガ作りの大きな繭倉庫に紡績機がびっしりと並び、壁には従事していた若い女子工員の写真も飾られていた。
労働環境など整備されていない時代、楽しいことばかりではなかったはずだ。辛いことも多かっただろう。それでも何百年も鎖国をしてきた日本には他に何の産業もなかった。ひたすら蚕を育て、繭を茹で、絹糸を絡め取る―、やれることはそれだけだった。
しかし、彼女らが紡いだ美しい絹糸は決して切れることなく、列強だけが独占していた「近代文明」を確実に手繰り寄せた。
震災による原発事故で電力不足が懸念される中、「生きた心地がしない」と漏らす経営者もいる。しかし、あきらめないでほしい。日本の夜明けを告げた富岡製糸場にはそもそも電気などなかった。最初は水力で器機を動かしたという。
現代とは全く事情は変わる。だが、いつだって日本の前途は洋々とばかりしていたわけではない。近代化の果てには戦争もあった。永久に平穏無事などあり得ないし、そして明けない夜もまたないのだ。
娘はつかまり立ちを覚えたようで、「ふん!ふん!」と、女の子にしては猛々しい鼻息を散らしながら、全身に力を込めて本気である。ほかにできることはない。やれることを精一杯にやるだけだ。
隣では家内が娘に遊ばせるヌイグルミを作るために、糸をつまんで慣れない針を進めている。明るい未来を、信じている。
明治初頭に設置された富岡製糸場は、本邦初の官営製糸工場として日本の文明開化を象徴する建造物だ。赤レンガ作りの大きな繭倉庫に紡績機がびっしりと並び、壁には従事していた若い女子工員の写真も飾られていた。
労働環境など整備されていない時代、楽しいことばかりではなかったはずだ。辛いことも多かっただろう。それでも何百年も鎖国をしてきた日本には他に何の産業もなかった。ひたすら蚕を育て、繭を茹で、絹糸を絡め取る―、やれることはそれだけだった。
しかし、彼女らが紡いだ美しい絹糸は決して切れることなく、列強だけが独占していた「近代文明」を確実に手繰り寄せた。
震災による原発事故で電力不足が懸念される中、「生きた心地がしない」と漏らす経営者もいる。しかし、あきらめないでほしい。日本の夜明けを告げた富岡製糸場にはそもそも電気などなかった。最初は水力で器機を動かしたという。
現代とは全く事情は変わる。だが、いつだって日本の前途は洋々とばかりしていたわけではない。近代化の果てには戦争もあった。永久に平穏無事などあり得ないし、そして明けない夜もまたないのだ。
娘はつかまり立ちを覚えたようで、「ふん!ふん!」と、女の子にしては猛々しい鼻息を散らしながら、全身に力を込めて本気である。ほかにできることはない。やれることを精一杯にやるだけだ。
隣では家内が娘に遊ばせるヌイグルミを作るために、糸をつまんで慣れない針を進めている。明るい未来を、信じている。
2011年7月20日水曜日
マイカー取得までの道のり
先日、普通自動車の免許を取った。学生時代に取る余裕がなかったので、今になって教習所に通うことに。しかし、仕事の忙しさを理由にたびたび教習所から足が遠のき、結果的に無事免許取得できたはいいが、気が付けば教習所に通い出した日から約10カ月が経過していた。長い戦いだった。
免許取得となれば早速自動車購入と行きたいところだが、ここで忘れてはならないのが自動車に関連する税だ。購入時に都道府県に対して支払う「自動車取得税」。また、自動車検査証の交付を受ける人や、車両番号の指定を受ける人が国に対して納める「自動車重量税」。さらに毎年4月1日現在の自動車の所有者に対して課される「自動車税」。同じく毎年4月1日現在で、軽自動車を所有している人に対して課される「軽自動車税」。最近は「エコカー減税」がさまざまな車種で認められているが、教習所通学費からマイカー取得までにかかる金額を考えると、少しの税金でも気が重くなる。
現時点でマイカー購入の予定はない。免許証もレンタルビデオ店のカード作りに利用したのみだ。
免許取得となれば早速自動車購入と行きたいところだが、ここで忘れてはならないのが自動車に関連する税だ。購入時に都道府県に対して支払う「自動車取得税」。また、自動車検査証の交付を受ける人や、車両番号の指定を受ける人が国に対して納める「自動車重量税」。さらに毎年4月1日現在の自動車の所有者に対して課される「自動車税」。同じく毎年4月1日現在で、軽自動車を所有している人に対して課される「軽自動車税」。最近は「エコカー減税」がさまざまな車種で認められているが、教習所通学費からマイカー取得までにかかる金額を考えると、少しの税金でも気が重くなる。
現時点でマイカー購入の予定はない。免許証もレンタルビデオ店のカード作りに利用したのみだ。
2011年7月4日月曜日
白地図を流れる消せない汚れ
原発事故の放射能汚染度を示す「サーベイマップ」なるものが公表されている。何も書かれていない福島県の白地図の上に、海沿いの福島第一原発から北西に向けて、流れるように赤色やオレンジ色の濃淡で放射線量の測定レベルが表現されている。まるで、清潔な真っ白い大地にそう簡単には落とせない汚いペンキをぶちまけたように見えた。
せつなくなった。美しい自然、豊かな山河こそが魅力であった福島を汚したのは誰か。猛暑に耐えかねたように原発の再稼働の話も出てきているが、自分たちさえ快適ならば、他人の土地などどんなに汚れようが構わないのか。ノドの渇きを潤すために飲み干した空き缶を、そのまま他人の庭に投げ捨てているモラルと、程度の大小を除けば何ら変わることがない。
“ヒロシマ”“ナガサキ”で、世界唯一の被爆国となった我が国が60有余年を経て、今度は自らが設けた核施設によって被曝するとは――。
悲劇にしても、皮肉に過ぎる。
せつなくなった。美しい自然、豊かな山河こそが魅力であった福島を汚したのは誰か。猛暑に耐えかねたように原発の再稼働の話も出てきているが、自分たちさえ快適ならば、他人の土地などどんなに汚れようが構わないのか。ノドの渇きを潤すために飲み干した空き缶を、そのまま他人の庭に投げ捨てているモラルと、程度の大小を除けば何ら変わることがない。
“ヒロシマ”“ナガサキ”で、世界唯一の被爆国となった我が国が60有余年を経て、今度は自らが設けた核施設によって被曝するとは――。
悲劇にしても、皮肉に過ぎる。
2011年5月23日月曜日
真夏の節電対策でちょっとした心掛け
東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、このままでは電気需要がピークに達する夏には電力が足りなくなる。政府が「15%削減」を目標にしているように、東京電力と東北電力管内の企業は節電対策が求められているところだ。
これまで、京都議定書に温室効果ガスの排出取引が規定されて国内市場が動き出そうとしても、環境に目を向けない企業が大多数に上っていた。だが今回は、未曾有の危機が日本中を巡り、それを受けて一致団結している姿が垣間見える。5月の時点ですでに対応に着手している企業も多い。東北や関東の住人は慣れ始めてきたかもしれないが、九州から都内に来た友人は、稼動していないエスカレーターや光を発していない電飾看板、「節電営業中」の張り紙などを見て驚いていた。
今夏はクーラーではなく扇風機を使おうと考える人も増えているようだ。わが家ではうちわが大活躍しそうだ。ほかにも、建築物の温度上昇対策として注目される「グリーンカーテン」を実現するために、キュウリやヘチマなどのつる植物をベランダで育てるのも有効だろう。それと、今夏は家庭用のかき氷器の購入を考えている。電動ではなく手動の製品を選ぶつもりだ。どれだけ節電に役立つのかは正直分からないが。
これまで、京都議定書に温室効果ガスの排出取引が規定されて国内市場が動き出そうとしても、環境に目を向けない企業が大多数に上っていた。だが今回は、未曾有の危機が日本中を巡り、それを受けて一致団結している姿が垣間見える。5月の時点ですでに対応に着手している企業も多い。東北や関東の住人は慣れ始めてきたかもしれないが、九州から都内に来た友人は、稼動していないエスカレーターや光を発していない電飾看板、「節電営業中」の張り紙などを見て驚いていた。
今夏はクーラーではなく扇風機を使おうと考える人も増えているようだ。わが家ではうちわが大活躍しそうだ。ほかにも、建築物の温度上昇対策として注目される「グリーンカーテン」を実現するために、キュウリやヘチマなどのつる植物をベランダで育てるのも有効だろう。それと、今夏は家庭用のかき氷器の購入を考えている。電動ではなく手動の製品を選ぶつもりだ。どれだけ節電に役立つのかは正直分からないが。
2011年5月16日月曜日
未来に続く伝統技術
東日本大震災では多数の文化財も被害を受けた。茨城大学五浦美術文化研究所六角堂は建物自体が津波で消失、都心でも江戸城跡の石垣が崩落するなど、広範囲にわたって被害が生じた。
文化財の修復に必要なのは優れた技術だけではない。古くから伝わる伝統技術を習得している人でなければ取り組めない作業だ。例えば多くの重要文化財は木造だが、近代建築が主流となった今、古くからの木工技術を習得している技術者は少なくなった。文化財保護のためにはそれを修復する技術も併せて保護・伝承する必要があるのだ。国は文化財の保存に欠くことができない伝統技術の保護にも予算を投入してきた。
税務関係の記事を書く中で各省庁の予算を目にする機会が多くなった。金額の大小に首を傾げることも多々あるが、数字の裏に隠れた事情を知ると、また違った感想を持つこともある。財政再建が叫ばれる中、現時点で必要なのかどうかで予算を判断しがちだが、「未来の日本をつくる」という意識は誰もが強く持ち続けるべきだろう。伝統技術は長い歴史の中で日本人が生み出してきた国の宝だ。その技術で守られてきた古の姿から現代の人間が学ぶことや感じることはいくつもある。過去、災害などの危機に見舞われながら幾度となく再建されてきた文化財の姿を思い浮かべ、前進し続ける思いを新たにする。
文化財の修復に必要なのは優れた技術だけではない。古くから伝わる伝統技術を習得している人でなければ取り組めない作業だ。例えば多くの重要文化財は木造だが、近代建築が主流となった今、古くからの木工技術を習得している技術者は少なくなった。文化財保護のためにはそれを修復する技術も併せて保護・伝承する必要があるのだ。国は文化財の保存に欠くことができない伝統技術の保護にも予算を投入してきた。
税務関係の記事を書く中で各省庁の予算を目にする機会が多くなった。金額の大小に首を傾げることも多々あるが、数字の裏に隠れた事情を知ると、また違った感想を持つこともある。財政再建が叫ばれる中、現時点で必要なのかどうかで予算を判断しがちだが、「未来の日本をつくる」という意識は誰もが強く持ち続けるべきだろう。伝統技術は長い歴史の中で日本人が生み出してきた国の宝だ。その技術で守られてきた古の姿から現代の人間が学ぶことや感じることはいくつもある。過去、災害などの危機に見舞われながら幾度となく再建されてきた文化財の姿を思い浮かべ、前進し続ける思いを新たにする。
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