2014年12月12日金曜日

安倍首相が据える選挙の“争点”とは?


 エヌピー通信社などが加盟する日本記者クラブで12月1日にひらかれた与野党8党首による討論会(『納税通信』第3351号12面)で、「消費税増税延期の是非」を選挙の“争点”に据えようという安倍首相の意図が垣間見える場面があった。

 衆院解散を決断した背景について記者に問われた安倍首相は、まず、「党内においても『(消費税を)ちゃんと上げるべき』という声があった。税の専門家もそう。新聞社の経済部でもそうだと思う。そのような役所もある。そうしたなかで(増税時期を)変えるのは簡単なことではなかった」と、各方面の調整の難しさと世論の状況を説明。これに続けて、「国民の皆さまの(「賛成」の)声がなければ変更できない。税における重大な変更である以上、(国民の信を問うのは)民主主義の基本」と解散を決断した理由を語った。

 このことで選挙の“争点”が「消費税増税延期の是非」であることを印象づけた格好だ。しかし、争点は与党が決めるものではないだろう。有権者は各党の主張をしっかり見極めたい。

2013年2月26日火曜日

なぜe-Taxは普及していないのか?


確定申告が始まった。申告が必要な人は、税理士事務所に業務を依頼するか、時間を見つけて自力で何とかしなければならない。毎年ぎりぎりまで対応を先延ばしにしてしまう人も少なくないだろう。駅から遠い税務署などは、税務署以外の場所に会場を設け、申告相談などを受け付けている。当然、これらの会場を貸し切る費用は税金でまかなわれている。

いくら混雑緩和や利便性アップのためとはいえ、利用料がびっくりするくらい高い会場を押さえることは納税者の同意を得られにくい。そのため、地域ごとにコストパフォーマンス(費用対効果)に関するデータが調べられているらしい。

費用対効果の「効果」の部分だが、話によると、「利用納税者の総数」だそうだ。営利事業ではない以上、ここを「税収の総額」にしていないのは賢明な判断といえるだろう。ただ、税務署の建物であろうと庁舎外であろうと、毎年ひどい混雑が発生しているのはかわりない。

ここまでIT化(いまは「ICT化」と表現するらしい)した社会に、電子申告の普及が追いついていないという問題は、確定申告期に毎年浮かびあがる。e-Taxの使い勝手や混雑への苛立ちが「納税」自体への不満につながってしまうのは、当局としても不本意なはずだ。

2013年2月8日金曜日

宝飾業界の動向から景気を探る


政権交代後、景気回復の期待が高まり、さまざまな業界で今後の動向と予測が立てられている。本紙の「経営と暮らしのあらかると」に連載したジュエリープロデューサー増渕邦治氏主催の「2013年の宝飾品を占う」というセミナーに参加してきた。

全体的にアットホームな雰囲気で、参加者は主に宝飾品の販売員や職人に加え、ジュエリーに関心がある一般の人も参加していたようだ。バブル期は3兆円だった市場も、現在は8900億にまで縮小した。今後の宝飾業界について増渕氏は「この業界は世間の景気に2年遅れる。経済情勢が好転したとしても、業界の不況感は2年間続くと肝に銘じて欲しい」と述べていた。

中でも養殖真珠の動向について「養殖真珠は一流ブランドの店頭から姿を消す」と言った言葉には驚いた。そもそも10年ほど前から、養殖真珠は宝石でないと言われ続けていたそうで、これは業界全体の正しい商品知識の啓蒙の動きらしい。一方で宝石の二次市場、つまりリサイクル市場は快調なのだとか。カラーストーンの動向には「ブルー系が来る」と増渕氏。さらに「カルティエあたりで仕掛けてくるのではないか」と明言した。

気になる金の動向については、金の価格はますます上昇すると言及した。ただし、金は世界情勢に大きく左右されるので、投資には不向きだと言う。先のアルジェリアで発生したテロのような世界的な事件が起これば乱高下をするため「金に関しては、マスメディアの情報には踊らされないこと」と参加者に対して注意を促していた。

宝飾品の中でもアンティークになれば、今度は稀少価値というものがつく。価値を決めるのは正しい目を持つ人になる。本質を見極めるためには、多くの本物に触れることが大事だと教えられた。磨けば光る原石集めでさえ、本質を知らなければただの石集めになるように。世の中に溢れかえる「本物に限りなく近い偽物」に対しても、自分の目で正しい判断をしたいものだ。

2013年1月28日月曜日

外食産業が苦境の中、「中食」産業が市場拡大


納税通信第3257号(2月4日発行)の1面で交際費を取り巻く環境についてまとめたが、交際費支出額の縮小傾向は、国内外食産業の市場規模の動向と当然のようにリンクする。食の安全・安心財団の「外食産業総合調査研究センター」によると、平成23年の国内外食産業(料理品小売業を除く)の市場規模は23兆475億円。前年から3930億円(1.7%)縮小し、4年連続で前年割れとなった。得意先や仕入先などを接待する機会が減ったことがここからも垣間見える。

外食産業が縮小する一方で、「中食」産業は市場を拡大している。中食とは、家庭外で調理された食事を持ち帰って食べること。テイクアウトやデリバリーを指す。前述の外食産業総合調査研究センターは、売上高のうち食事の“持ち帰り”の売上比率が半分を超える事業所を「料理品小売業」としてまとめたが、これは中食の一種と捉えて問題ないだろう。この業種の市場規模は5兆7790億円で、前年から1.6%プラスだった。背景には、外食三昧する金銭的な余裕がなくなってしまっても、家庭で調理する(あまり耳慣れないがこれを「内食」というそうだ)機会が減っている実態がある。

突然話が変わるようで恐縮だが、「メール設定」や「プリンター設定」などのパソコンの基本設定業務に高額な費用をとる業者に対し、若者は「パソコン初心者をカモにしている」と指差す。しかし、彼らは自転車の簡単なパンク修理ができずに業者に修理を依頼する。年配者のなかには「自分でやったほうが安いのに・・・・・・」と感じる人は少なくないはずだ。とはいえ、自分が苦手な部分を誰かに任せてしまうことは、効率の面からいっても決して間違いとはいえない。

ひるがえって中食の話。自身を振り返ると、時間の節約と、そもそも料理が得意ではないことを理由にして内食(自炊)をほとんどしていない。中食中心の生活になっている。効率の面からいえば間違っていないかもしれないが、それでも何度も内食生活を考えるのは、お金を少しでも貯めたいという気持ちがあるためだ。金銭的不安がなくなる経済環境の到来を待つか、料理を覚えるか―の選択肢の狭間で揺れている。もし「自分でやったほうが安いし、美味しい」となる見込みがあるのなら、問答無用で内食中心の生活を目指すだろうが、そこまでの腕はたぶんない。

2013年1月18日金曜日

阪神大震災から18年 復興予算の行方を見つめる

6434人の犠牲者を出した阪神大震災は発生から18年を迎えた。被災した各地で追悼行事が行われ、犠牲者の冥福を祈った。東日本大震災で犠牲になった家族も追悼行事に参加しているという。阪神と東北はつながっているのである。

民主党政権時には復興予算が被災地の復興と関係ない事業に使われるなど、不適切な使用の実態が浮き彫りになっている。安倍政権は1月10日の復興推進会議で、東日本大震災の復興予算に関して、民主党政権が定めた2011年から5年間で19兆円とした予算を倍額にする方針を表明した。加えて景気浮揚とデフレ脱却のため、20兆円規模の緊急経済対策を確定した。

安倍首相は「かつての自民党とは異なる」ことを強調しているが、過去の自民党のばらまきが復活した趣も否定できない。復興予算は今後10年から25年に及ぶ住民税や所得税の増税で賄われることになる。増額された復興予算が被災地の生活再建に使われる保証は何もない。「多額の予算が無意味な開発事業に投じられた悪しき前例が繰り返されている」という被災地神戸からの声に耳を傾けたい。

2012年12月21日金曜日

租税教育は生きた教育となるか

小学生の時に転入生から競技かるたの楽しさを教えてもらった綾瀬千早。高校生になり、立ち上げたかるた部で団体戦優勝を狙いながら自身の腕を磨き、にぎやかで“熱い”学園生活を送る――。

少女漫画原作のアニメ「ちはやふる」が面白い。おかげで競技かるたのルールを覚えた。そういうわけで新年は、1月から始まるアニメ版の第2期とともに、現実世界で繰り広げられる競技かるたの第59期名人位と第57期クイーン位(女性部門の最高位)の決定戦をテレビでじっくり観ようと思っている。

1月5日・近江神宮で決定戦に臨む楠木早紀クイーンは、中学3年生(15歳)で史上最年少のクイーンとなって以来、8期連続で決定戦で勝利。永世クイーンとして現在進行形で“楠木時代”を築いている。対するは本多未佳6段。どちらが勝負を制するのか、ひじょうに楽しみだ。

名人戦も注目の一戦。史上最長の14連覇を果たした西郷直樹永世名人が、決定戦の出場を辞退。東日本と西日本の予選を勝ち抜いた二人が空いた席を奪い合う。

「スラムダンク」がバスケットボール人口を増やしたように、「ちはやふる」は競技かるた人口を拡大させたそうだ。租税教育が盛んになってきたが、これらの漫画の成功例のように、税金の本質を子どもがちゃんと知る機会になることを願う。

2012年10月22日月曜日

公共空間におけるマナー

最近、信号を守る歩行者が増えているような気がする。見通しの良い交差点で、車はおろか自転車1台来ないというのに、いい大人が何人もじっと待っている。信号なんぞは歩行者を守るためにあるもので、「赤だから渡らない」などはナンセンスというものだ。

一度ルールとなったものには思考停止して守ろうとする保守思想を人間は生まれつき持っているのだろうか。それを破ることで遭う村八分への恐怖か。

明文化されていないものの、不思議なルールはエスカレーターにもある。いつのころか、関東は右を、関西圏は左を空けて立つようになった。急いで歩く人に道を作るためだ。地下深くまで掘られた新設の地下鉄駅などでは、ふうふう言いながら右側を上る人と、立つために左に並ぶ人と、なかなか不思議な光景だ。みんなが進んで守っているルールのくせに、そのルールによって誰一人幸せそうに見えない。こうした無意味なルールを破るためになんらかの行動を起こしたいが、ここでの天の邪鬼はなかなか勇気が要る。

ルールは頑なに守るくせに、公共空間におけるマナーは悪くなっていると感じる。とくに最近の年長者のマナーの悪さは目に余る。先日も、池袋駅で駅員さんに路線を伺っていると、とうに還暦を過ぎた二人組が横から割り込んできて、私には目もくれずに駅員さんに質問をぶつける。だが駅員も慣れたもので、闖入者には目もくれずに私への応答を続けていると、「ちょっと聞いてるの?」「だからJRはダメなのよ」と言い放ち、閉じた自動改札の隙間を無理矢理くぐり抜けていった。不当に罵られる駅員に同情を覚え、「最近の年寄りは身勝手だね」と言うと、小さいながらもしっかりした口調で私から目をそらさずに「はい」とだけ返事をしてくれた。

どこかがおかしくなっていると感じるこの国だが、同じ思いの人がどこかにいる。その人たちとつながることで、なんとかなるかもしれないと思えた日だった。

2012年10月1日月曜日

税務調査の「秋」

税界では「秋」という言葉に「税務調査の」という文言を冠する。7月の人事異動の慌しさが落ち着きを見せ、事前調査等を終えた当局が動き出す時期だからだ。ただ一般的に冠されるのは、「スポーツの」「読書の」「文化の」、そして「食欲の」だろう。

食欲の秋には食べ過ぎてしまう人も多いだろうが、その流れには乗らず、ダイエットに励むことにした。始めてから2週間後の健康診断では、昨年の同じ時期よりも5kg体重を落とすことができた。といっても、健康診断のためにダイエットをしたわけではない。きっかけは大腸の内視鏡検査をしたことだった。検査の数日前から暴飲暴食をやめ、前日は3食おかゆ三昧。当日は下剤の力を借りて腸の中のモノを全部出し切った。その時点で体重計に乗ってみると数日前と比べて2kg減っていたのを見て、体重計に乗ることが楽しくなったのだ。

ただ、5kg落として以降、体重を減らすのは難しくなっている。ダイエットの楽しみはほとんど終わったのかもしれない。「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」の言葉のように、リバウンドが近い気もしている。

2012年8月27日月曜日

助成金は競争率の低いものからチャレンジ!

ある会社が助成金を一度受けたところ、審査担当者から「こっちの助成金にも応募してくれませんか」と誘われた。驚きながら詳細を聞くと、募集枠に対して応募が少なく、しかし予算を使い切る必要性から、不良会社に助成することになりそうとのこと。そこで、その会社に白羽の矢を立てたという。

納税通信3237号の1面で取り上げた助成金は、ハードルが高いと感じて敬遠してしまう会社が少なくない一方で、使っている会社はとことん使おうと考えている。助成金の審査担当者によると、一度何らかの助成金を受けている会社は審査に通りやすいそうだ。

「過去に助成されているということは、一度は認められたということ。そこに信頼感を覚える。それと、過去の経験があるので、説明の手間も省ける」。

会社が人材を採用する時にも、同じような仕事をしている履歴を見て期待したり、教育の手間が省けることに安心したりする。それと同じことのようだ。冒頭の会社のような“棚ぼた”を期待するのもどうかと思うが、1面にあるように、交付額の小さい、競争倍率の低い助成金から挑戦してみる価値は十分あるだろう。

2012年8月20日月曜日

“自殺増税”

納税通信の第3236号の1面で書いた“増税自殺”は造語です。

多少強引な言葉ですが、自殺数の推移と増税のタイミングがあまりにもピッタリと合っていること、そして取材先で増税による経営者の苦悩がどれほど大きかったかを聞き、使用いたしました。

今回の消費税増税は、国の借金を後世に残さないためという大義名分が立てられました。また福祉目的と言っていたこともありました。どんなにきれい事を並べても、次の増税以降の社会をしっかり見つめていかなければなりません。

エヌピー通信社では、(1)不合理な税制はないか、(2)われわれの納めた税金がどう使われているか――を「納税通信運動」として1948年の発刊以来、一貫して唱えてきています。

本来、人を育て、そして守るための税が、その導入により人を殺す結果になることなど、決してあってはならない話です。

2012年8月6日月曜日

長きにわたる税理士資格の論争、ついに決着の兆し

経営者には見えづらい部分だが、一口に「税理士」といっても、登録の経緯によって複数のタイプに分けられる。

税理士試験の合格者はもちろん税理士だし、税務官公署で一定の経験を積んだ“OB税理士”と呼ばれる人も結構多い。税理士制度の前身である「税務代理士」がそのまま税理士になったケースもある。そして、公認会計士や弁護士も、それぞれの資格を持っていれば税理士として登録することが認められている。

実はこの最後のルートが、税理士業界にとって長年の懸念となっているのだ。税理士としての能力が担保されていないのに、税理士になれるなんておかしい――。これが税理士サイドの主張。税理士業界では、税理士試験の一部を突破しなければ会計士や弁護士を税理士として認めないというルールを作ろうとしている。

特に、弁護士よりも会計士にターゲットを絞った改正だといわれる。もちろん会計士サイドは反論している。最近では、7月25日に日本公認会計士協会の山崎彰三会長が「会長所感」として、「租税法を含む公認会計士試験に合格した者が資格を取得するまでの間には(中略)税務に関する教育研修を履修し、試験されている」「公認会計士は資格取得後においても(中略)税務に係る知識の習得に日々努めてきている」などと、税理士業務を行う資質を会計士が持っていることを強調した。

この隣接士業者のせめぎ合いは長い歴史を持つ。税理士法3条では、税理士になれる人として、(1)試験合格者、(2)試験免除が全科目に及ぶ人、(3)弁護士、(4)会計士―が順番に並んでいる。これが昭和55年の改正までは、(3)(4)(1)(2)の順番だったそうだ。これも戦いの記録のひとつといえる。

来年中にも施行が決まる改正税理士法にこの制度の見直しが含まれるのか。長きにわたって続くこの論争、近いうちにひとつの決着が予定されている。

2012年7月26日木曜日

戸惑うのは新入社員ばかりではないのだ

「聞いてねえことやらすなよな」「そうそう、人にやらせるなら、ちゃんと教えろっての」「わからねえから放っておいたら文句言いやがってよ」「人の使い方が下手だよね」「仕事のできない上司ってマジうざい」

午後11時過ぎ、山手線内での若者たちの会話である。今年入社の同期だろうか、男女4人とも着慣れないスーツが初々しい。池袋から五反田までの22分間、会社や上司への愚痴を興味深く拝聴した。話は多岐にわたったが、4人の思考に共通していたのは、「しっかり教えろ」ということだった。

わからないことを自分で調べることができない、という高レベルな話ではない。「自分が何が分からないのか」ということすら、まず周囲のオトナが見付けてくれたのだろう。そのうえで「こうしてみたらどうだろう」と機嫌を損ねないように教えてもらってきたのか。社会に出てみて自分たちの“常識”との違いに、さぞかし戸惑ったことだろう。

だが戸惑いは、彼らを受け入れた社会のほうが大きいはずだ。最近、企業経営者と話をすると「社員とのコミュニケーションの取り方がわからない」という声をよく聞く。仕事を教えれば、「はい」と答えるが、やらせてみると全く理解していないないことが多いという。さらには、自分でわかった部分だけ仕事をする者も少なくないそうだ。上司が叱ると「いや、よく分からなかったんで」としれっと答えるらしい。つまり「教え方が悪いんだよ」ということだ。

産業能率大学恒例の「2012年度新入社員の理想の上司ランキング」では、男性が大阪市長の橋下徹、女性は女優の天海祐希だった。ともに理由は「リーダーシップがありそう」とのこと。優しく教えろだの、リーダーシップを発揮しろだの、面倒なことだ。

2012年5月24日木曜日

災害を乗り越える力

茨城と栃木で竜巻が起きた5月6日、栃木県益子町では「益子春の陶器市」が開かれていた。筆者はその日、観光で益子町を訪ねた。ゴールデンウィークの最終日でもあった6日の朝はまさに行楽日和と言えるさわやかな天気だった。市で賑わう町の中心から離れると、広い田んぼで田植えをする農家の姿も見られた。

お昼を過ぎた頃からだった。辺りが一気に真っ暗になり、地面を叩きつけるような雨とひょうがものすごい勢いで降ってきた。途中晴れ間が見えて、雨宿りをさせてもらった店を出て、陶器市へ向かうと地面はドロドロ、売り物の陶器は雨に濡れ、「もう雨だから安くするよ」と諦めかけた陶芸家の声も聞こえた。

しばらくするとまた雨が降ってきて、町全体が暗くなった。空だけでなく、停電で街灯や店全体の明かりも消えたのだ。隣の真岡市に竜巻が襲って被害が出ているという話を聞きつけ、いよいよ帰りの電車も動かなくなるかもしれないと引き上げたが、電車から見た光景にも衝撃を受けた。栃木の名産いちごが植えてあったであろうビニールハウスは破れ、樹齢何十年かの樹木は折れて倒れていた。朝見かけた田植えをしていた農家の人たちが心配になった。

自然災害は一瞬にして人間の営みを奪う。いくら家族で避難計画を立てても、会社でBCPを作成してもいざというときは思い通りにいかないかもしれない。けれど、筆者が益子町で出会った人たちは騒ぎ立てず、冷静に対処し、そして観光客を心配して移動の手段などを探してくれた。その後のボランティアの活動なども素早かったという。助け合いが災害を乗り越える大きな力になることを実感した。

2012年5月16日水曜日

チャンスは逃さない!

会社の近くの古本屋に、イラストレーター安西水丸の直筆色紙が売り物として飾られていた。村上春樹との共著などで彼の名前を知っていたし、色紙に描かれたちょんまげ・はかま姿の愛らしいキャラクターも悪くはなかった。ただ、最も惹きつけられた部分は別のところにあった。それは片隅に記された日付。見覚えのあるその数字は自分が生まれた年月日だった。魅力的に感じたものの、ちょっとしたランチ10日分ほどの値段を見て即決はできなかった。店に行くたびに眺めるだけの数日が過ぎた。

ある日、色紙が飾られていたはずの場所から、ちょんまげ・はかま姿のキャラクターが消える。その時にどれだけ欲しかったのかにようやく気付き、手に入れる機会を逃したことを悔やんだ。経営者は、会社の将来を決めるような場面でそのような無念さを味わうべきではない。政治家でも同じこと。目の前のチャンスを逃さないように、正しい決断力を身に付けたいものだ。なお、色紙は店内の別の場所に移動していただけだった。もちろん今では自宅の壁に飾られている。

2012年4月26日木曜日

いろいろな〝記憶〟

長年の闘病生活の末、一昨年の夏にこの世を去った母の誕生日は3月22日だった。今からちょうど2年前、生前最後の誕生日に実家に帰ったとき、機械関係全てが苦手だった母が「パソコンを教えてほしい」と言ってきた。2日間教えて、その数週間後にまた顔を合わせると、かちゃかちゃとキーボードをいじくっていた。父に教わりながら知り合いにメールを送っていたようだ。

ニンテンドーDSという携帯ゲーム機で「脳トレ」関連ゲームに集中していた姿も思い出す。駅の売店で培った経験を生かし、釣銭をいかに早く数えるかを競うゲームで高得点をたたき出していた。わが家のDSの歴代記録トップ3をいまでも母が占めている。

孫娘の眼に目やにがたまり、まぶたがはれ、目が開かなくなった時期があった。数日して完治したとき「わたしの顔を忘れちゃうかと思った」と言っていた。

そんなときの母の気持ちは理解できる。他の誰かの記憶(あるいはゲーム機の記録)に自分が残ってほしいという思いがあったのだろう。

東日本大震災の発生から1年が過ぎたが、これもわれわれが残さなければならない記憶。それと、政治家の行動も記憶に残しておきたい。国民から見られている意識が薄い政治家がいかに多いことか。

2011年12月5日月曜日

「寄付」と「寄附」

日本語には同音異義語がたくさんある。「みる」は「見る」「観る」「診る」「看る」などさまざまな漢字に使い分けられる。この場合、意味も異なってくるのでどのように使うかは分かりやすいが、意味もほぼ同じでわずかな差しかない漢字は、記事を書き始めて少しの期間しか経っていない私を苦しめる。使い分けが正しくできずに、真っ赤に修正されるのが常だ。

苦戦したのは、「寄付」と「寄附」。国税庁のホームページには「寄附」と書かれている。所得税法や法人税などの条文も同様「寄附」を使用。税金について書く時は「寄附」を使うのかと書いていたら、新聞協会では「寄付」で統一されているとのこと。記者の必携書である記者ハンドブックを見ると、そこでは特に使い分けに指示がされていない。ただし、「附」の漢字はあまり使わないとされている。日常生活では辞書代わりのように使っているウィキペディアでも念のため見てみたが、ここで「寄附」は誤字とまで書かれている。いよいよ混乱してきたが、本紙では「寄付」を、条文の引用のみ「寄附」を使うらしい。

お隣の国、韓国では漢字はほぼ使われなくなり、音で示されるハングルを使う。確かにハングルは画期的な文字だと思う。日本のように漢字やひらがなやカタカナが一緒に使われている文字文化を持つ国も少ない。こうしたミックス文化は個人的には好きだが、その判断は難しい。

2011年10月28日金曜日

追い剥ぎ国家

プロクルステス。舌を噛みそうなこの名は、ギリシャ神話に登場する残虐な追い剥ぎのものだ。山間の街道筋で宿屋を営んでいて、旅人がやってくると無理やり特製のベッドに寝かせる。身長がベッドのサイズに合わないと、重しを付けて手足を引き伸ばしたり、足か頭を切り落としたりしたという。ベッドに身体を合わせるのが彼の流儀だ。軍隊のブラックジョークに「靴に足を合わせろ」というのがあるが、それと同じ基準。

神話世界の暴虐さは相当なものだが、21世紀に暮らす生身の人間に対しても、国家が似たような暴虐さを発揮している。社会保障審議会年金部会が「原則65歳」に向けて引き上げ途上にある年金支給開始年齢を、さらに68 ~ 70歳まで引き上げる案を検討しているというのだ。42.195キロと信じてマラソンを走っていたら、終盤で勝手にゴールの位置をずらされ、さらに再延長となるようなものだ。「財源が不足している」「元気な高齢者が増えている」というのが理由だそうだ。冗談じゃない。それでは「ベッドに合わないから」という追い剥ぎの理屈と、まったく同じではないか。年金を頼りに、つましくもじっくりと残りの日々に向き合いたい。そう考えているひとは多いはずだ。走る距離が長くなったために、受給の前に脱落、では何とも不条理。年金ベッドに合わせるために、寿命を延ばすわけにはいかないのだ。

2011年9月2日金曜日

“どじょう総理”の政治活動

 新総理が誕生した。民主党代表戦の投票前演説は多くの議員の心をつかんだといわれる。現段階では世間でも好意的に見られているようだ。特に、詩人・書家の相田みつをさんの作品「どじょうがさ金魚のまねすることねんだよなあ」の引用は有名になった。相田みつを美術館には来館者が増え、作品を収録したダイヤモンド社の『おかげさん』は増刷が決まった。

 しばらく経つと、「どじょうみたいに」などという言葉を頭につけて、「泥に潜って逃げるのか」「つかみ所がない説明ばかり」「2匹目を期待するな」「背骨がふにゃふにゃしている」などと揶揄されそうな気もする。ただ、金魚が飼われている水槽のようにはきれいとはいえない政治の世界で、泥臭い政治がどれほど効果を発揮するのか、しばらく見てみようと考えている。

2011年7月22日金曜日

「近代」を手繰り寄せた富岡製糸場の絹糸

金色堂で知られる平泉の中尊寺が世界遺産に登録されることになった。震災以降の数少ない明るいニュースに居ても立っても、大人しくはしていられない気持ちになって、最近1歳になった娘を連れて世界遺産の“候補”に挙げられる群馬の富岡製糸場へ行ってきた。

明治初頭に設置された富岡製糸場は、本邦初の官営製糸工場として日本の文明開化を象徴する建造物だ。赤レンガ作りの大きな繭倉庫に紡績機がびっしりと並び、壁には従事していた若い女子工員の写真も飾られていた。

労働環境など整備されていない時代、楽しいことばかりではなかったはずだ。辛いことも多かっただろう。それでも何百年も鎖国をしてきた日本には他に何の産業もなかった。ひたすら蚕を育て、繭を茹で、絹糸を絡め取る―、やれることはそれだけだった。

しかし、彼女らが紡いだ美しい絹糸は決して切れることなく、列強だけが独占していた「近代文明」を確実に手繰り寄せた。

震災による原発事故で電力不足が懸念される中、「生きた心地がしない」と漏らす経営者もいる。しかし、あきらめないでほしい。日本の夜明けを告げた富岡製糸場にはそもそも電気などなかった。最初は水力で器機を動かしたという。

現代とは全く事情は変わる。だが、いつだって日本の前途は洋々とばかりしていたわけではない。近代化の果てには戦争もあった。永久に平穏無事などあり得ないし、そして明けない夜もまたないのだ。

娘はつかまり立ちを覚えたようで、「ふん!ふん!」と、女の子にしては猛々しい鼻息を散らしながら、全身に力を込めて本気である。ほかにできることはない。やれることを精一杯にやるだけだ。

隣では家内が娘に遊ばせるヌイグルミを作るために、糸をつまんで慣れない針を進めている。明るい未来を、信じている。

2011年7月20日水曜日

マイカー取得までの道のり

先日、普通自動車の免許を取った。学生時代に取る余裕がなかったので、今になって教習所に通うことに。しかし、仕事の忙しさを理由にたびたび教習所から足が遠のき、結果的に無事免許取得できたはいいが、気が付けば教習所に通い出した日から約10カ月が経過していた。長い戦いだった。

免許取得となれば早速自動車購入と行きたいところだが、ここで忘れてはならないのが自動車に関連する税だ。購入時に都道府県に対して支払う「自動車取得税」。また、自動車検査証の交付を受ける人や、車両番号の指定を受ける人が国に対して納める「自動車重量税」。さらに毎年4月1日現在の自動車の所有者に対して課される「自動車税」。同じく毎年4月1日現在で、軽自動車を所有している人に対して課される「軽自動車税」。最近は「エコカー減税」がさまざまな車種で認められているが、教習所通学費からマイカー取得までにかかる金額を考えると、少しの税金でも気が重くなる。

現時点でマイカー購入の予定はない。免許証もレンタルビデオ店のカード作りに利用したのみだ。