2012年7月26日木曜日

戸惑うのは新入社員ばかりではないのだ

「聞いてねえことやらすなよな」「そうそう、人にやらせるなら、ちゃんと教えろっての」「わからねえから放っておいたら文句言いやがってよ」「人の使い方が下手だよね」「仕事のできない上司ってマジうざい」

午後11時過ぎ、山手線内での若者たちの会話である。今年入社の同期だろうか、男女4人とも着慣れないスーツが初々しい。池袋から五反田までの22分間、会社や上司への愚痴を興味深く拝聴した。話は多岐にわたったが、4人の思考に共通していたのは、「しっかり教えろ」ということだった。

わからないことを自分で調べることができない、という高レベルな話ではない。「自分が何が分からないのか」ということすら、まず周囲のオトナが見付けてくれたのだろう。そのうえで「こうしてみたらどうだろう」と機嫌を損ねないように教えてもらってきたのか。社会に出てみて自分たちの“常識”との違いに、さぞかし戸惑ったことだろう。

だが戸惑いは、彼らを受け入れた社会のほうが大きいはずだ。最近、企業経営者と話をすると「社員とのコミュニケーションの取り方がわからない」という声をよく聞く。仕事を教えれば、「はい」と答えるが、やらせてみると全く理解していないないことが多いという。さらには、自分でわかった部分だけ仕事をする者も少なくないそうだ。上司が叱ると「いや、よく分からなかったんで」としれっと答えるらしい。つまり「教え方が悪いんだよ」ということだ。

産業能率大学恒例の「2012年度新入社員の理想の上司ランキング」では、男性が大阪市長の橋下徹、女性は女優の天海祐希だった。ともに理由は「リーダーシップがありそう」とのこと。優しく教えろだの、リーダーシップを発揮しろだの、面倒なことだ。