2013年2月26日火曜日

なぜe-Taxは普及していないのか?


確定申告が始まった。申告が必要な人は、税理士事務所に業務を依頼するか、時間を見つけて自力で何とかしなければならない。毎年ぎりぎりまで対応を先延ばしにしてしまう人も少なくないだろう。駅から遠い税務署などは、税務署以外の場所に会場を設け、申告相談などを受け付けている。当然、これらの会場を貸し切る費用は税金でまかなわれている。

いくら混雑緩和や利便性アップのためとはいえ、利用料がびっくりするくらい高い会場を押さえることは納税者の同意を得られにくい。そのため、地域ごとにコストパフォーマンス(費用対効果)に関するデータが調べられているらしい。

費用対効果の「効果」の部分だが、話によると、「利用納税者の総数」だそうだ。営利事業ではない以上、ここを「税収の総額」にしていないのは賢明な判断といえるだろう。ただ、税務署の建物であろうと庁舎外であろうと、毎年ひどい混雑が発生しているのはかわりない。

ここまでIT化(いまは「ICT化」と表現するらしい)した社会に、電子申告の普及が追いついていないという問題は、確定申告期に毎年浮かびあがる。e-Taxの使い勝手や混雑への苛立ちが「納税」自体への不満につながってしまうのは、当局としても不本意なはずだ。

2013年2月8日金曜日

宝飾業界の動向から景気を探る


政権交代後、景気回復の期待が高まり、さまざまな業界で今後の動向と予測が立てられている。本紙の「経営と暮らしのあらかると」に連載したジュエリープロデューサー増渕邦治氏主催の「2013年の宝飾品を占う」というセミナーに参加してきた。

全体的にアットホームな雰囲気で、参加者は主に宝飾品の販売員や職人に加え、ジュエリーに関心がある一般の人も参加していたようだ。バブル期は3兆円だった市場も、現在は8900億にまで縮小した。今後の宝飾業界について増渕氏は「この業界は世間の景気に2年遅れる。経済情勢が好転したとしても、業界の不況感は2年間続くと肝に銘じて欲しい」と述べていた。

中でも養殖真珠の動向について「養殖真珠は一流ブランドの店頭から姿を消す」と言った言葉には驚いた。そもそも10年ほど前から、養殖真珠は宝石でないと言われ続けていたそうで、これは業界全体の正しい商品知識の啓蒙の動きらしい。一方で宝石の二次市場、つまりリサイクル市場は快調なのだとか。カラーストーンの動向には「ブルー系が来る」と増渕氏。さらに「カルティエあたりで仕掛けてくるのではないか」と明言した。

気になる金の動向については、金の価格はますます上昇すると言及した。ただし、金は世界情勢に大きく左右されるので、投資には不向きだと言う。先のアルジェリアで発生したテロのような世界的な事件が起これば乱高下をするため「金に関しては、マスメディアの情報には踊らされないこと」と参加者に対して注意を促していた。

宝飾品の中でもアンティークになれば、今度は稀少価値というものがつく。価値を決めるのは正しい目を持つ人になる。本質を見極めるためには、多くの本物に触れることが大事だと教えられた。磨けば光る原石集めでさえ、本質を知らなければただの石集めになるように。世の中に溢れかえる「本物に限りなく近い偽物」に対しても、自分の目で正しい判断をしたいものだ。

2013年1月28日月曜日

外食産業が苦境の中、「中食」産業が市場拡大


納税通信第3257号(2月4日発行)の1面で交際費を取り巻く環境についてまとめたが、交際費支出額の縮小傾向は、国内外食産業の市場規模の動向と当然のようにリンクする。食の安全・安心財団の「外食産業総合調査研究センター」によると、平成23年の国内外食産業(料理品小売業を除く)の市場規模は23兆475億円。前年から3930億円(1.7%)縮小し、4年連続で前年割れとなった。得意先や仕入先などを接待する機会が減ったことがここからも垣間見える。

外食産業が縮小する一方で、「中食」産業は市場を拡大している。中食とは、家庭外で調理された食事を持ち帰って食べること。テイクアウトやデリバリーを指す。前述の外食産業総合調査研究センターは、売上高のうち食事の“持ち帰り”の売上比率が半分を超える事業所を「料理品小売業」としてまとめたが、これは中食の一種と捉えて問題ないだろう。この業種の市場規模は5兆7790億円で、前年から1.6%プラスだった。背景には、外食三昧する金銭的な余裕がなくなってしまっても、家庭で調理する(あまり耳慣れないがこれを「内食」というそうだ)機会が減っている実態がある。

突然話が変わるようで恐縮だが、「メール設定」や「プリンター設定」などのパソコンの基本設定業務に高額な費用をとる業者に対し、若者は「パソコン初心者をカモにしている」と指差す。しかし、彼らは自転車の簡単なパンク修理ができずに業者に修理を依頼する。年配者のなかには「自分でやったほうが安いのに・・・・・・」と感じる人は少なくないはずだ。とはいえ、自分が苦手な部分を誰かに任せてしまうことは、効率の面からいっても決して間違いとはいえない。

ひるがえって中食の話。自身を振り返ると、時間の節約と、そもそも料理が得意ではないことを理由にして内食(自炊)をほとんどしていない。中食中心の生活になっている。効率の面からいえば間違っていないかもしれないが、それでも何度も内食生活を考えるのは、お金を少しでも貯めたいという気持ちがあるためだ。金銭的不安がなくなる経済環境の到来を待つか、料理を覚えるか―の選択肢の狭間で揺れている。もし「自分でやったほうが安いし、美味しい」となる見込みがあるのなら、問答無用で内食中心の生活を目指すだろうが、そこまでの腕はたぶんない。

2013年1月18日金曜日

阪神大震災から18年 復興予算の行方を見つめる

6434人の犠牲者を出した阪神大震災は発生から18年を迎えた。被災した各地で追悼行事が行われ、犠牲者の冥福を祈った。東日本大震災で犠牲になった家族も追悼行事に参加しているという。阪神と東北はつながっているのである。

民主党政権時には復興予算が被災地の復興と関係ない事業に使われるなど、不適切な使用の実態が浮き彫りになっている。安倍政権は1月10日の復興推進会議で、東日本大震災の復興予算に関して、民主党政権が定めた2011年から5年間で19兆円とした予算を倍額にする方針を表明した。加えて景気浮揚とデフレ脱却のため、20兆円規模の緊急経済対策を確定した。

安倍首相は「かつての自民党とは異なる」ことを強調しているが、過去の自民党のばらまきが復活した趣も否定できない。復興予算は今後10年から25年に及ぶ住民税や所得税の増税で賄われることになる。増額された復興予算が被災地の生活再建に使われる保証は何もない。「多額の予算が無意味な開発事業に投じられた悪しき前例が繰り返されている」という被災地神戸からの声に耳を傾けたい。