2011年4月11日月曜日

保険募集人への取材で考えたこと

 「なんとか全員に連絡が取れました。大きな被害に遭われた方はいらっしゃらないようです」。安堵の表情を浮かべたのは、ある都内大手生保会社の募集員。仙台市出身だ。東北地方の顧客も多く、震災直後から担当する顧客全員に安否の確認を行い、契約と保障内容を改めて説明したという。

 震災後に求められる「経済活動の復旧」とは何を意味するのだろうか。経済活動とは、権利義務の設定とその履行の連続。むろん、権利の濫用や一方的な不利を押し付ける契約は許されないが、自由な契約と履行を原則とする市民社会を正常に機能させなければならない。

 そして、保険契約は、災害により直接的に、一斉に発生する権利義務の分厚い束だ。まず被災者が持つこの当然の権利を行使し、保険会社がそれを履行することに遺漏があってはならない。日本の復興のための第一歩として保険会社の責務は大きい。震災後に保険関係者の取材を行う中で、冒頭の募集人のように、それぞれの想いをもって権利行使を手助けしている人に多く会ったことは収穫だった。

 しかし、今号で取り上げた地震保険の加入率の低さに表れるように、震災前に締結した自由な保険契約による救済だけでは復興がままならないのは明らかだ。現在、国会や地方議会で、補助金や優遇税制など被災者救済策について議論されている。権利義務を確定するのは法。法を制定するのは議会である。まどろっこしい過程ではあるが、復興を望む市民として、この議論を自ら当事者として考える気概を持ちたい。

2011年4月4日月曜日

「税理士」と打ち込んだその瞬間から

 被災地域の税界関係者の無事を願いつつ、エヌピー通信社では地震発生直後から、販売課・広告課所属の営業局員が、可能な限りのあらゆる手段で、本紙読者の安否を確認している。

 宮城の税理士、X先生もそのひとり。本紙の送付先の住所を地図上で確認すると、極めて海に近い沿岸部の住所だ。「無事ですよ」の元気な声を聞きたいが、電話はいまだに不通。地図で等高線を確かめると、海には近いがやや高台になっているようにも見える。

 この住所を、今度は大手検索サイトが提供する衛星写真で確認してみる。ネットで見る東東北沿岸部の惨状は、衛星写真でも鮮明に伝わってくる。

「あった!」

 広告課長代理のMが指さす画面上には、確かに先生の事務所の建物が健在だ。隣接するやや大きな建物は病院とのこと。あくまでも地球の真上からの画像で見た限りだが、この周辺エリア一帯で、ほぼ原形のままの姿をとどめて残っている建物は、どうやらこの2棟だけのようだ。

 あの日、巨大な津波が押し寄せてきたその海に向かって、いまも凛と、「孤塁を守る」といった観で対峙する2棟の静止画像に、「先生は、きっと無事だ」と確信する。Mから吉報が伝えられたのは、その翌日のこと。

 「X先生の無事が確認できました。ご本人のお名前でネットの災害伝言板サイトに『無事です』の投稿を確認することができました。メッセージには税理士とあります。この地域で登録している税理士に同姓同名は存在しないので間違いありません」

 記者もそのメッセージを画面上で確認する。たしかに先生のお名前がそこにある。そして「税理士」の文字。ここにも、職業会計人としての責務と使命に誇りを持つプロフェッショナルの姿がある。

 自らの安否を連絡する伝言板に、「税理士」と力強く打ち込んだその瞬間から、きっと先生の「復興」はスタートしたに違いない。困難に立ち向かう中小企業経営者と、それを強力にサポートする税理士を、本紙は応援していきたい。さあ、「反撃」開始だ!

ペンギンの毛剃りは大丈夫?

 第52次南極観測隊は今年2月、ペンギンの背にビデオカメラを取り付け、海氷下の行動の記録に世界で初めて成功した。氷の海で餌を取る瞬間など、自然の雄大さを十分に感じさせる映像が収められ、南極生物の生態系解明にも期待が高まる。しかし同時に、カメラを背負ったペンギンの写真を見て「どうやって取り付けているのか」と疑問に思った人もいるだろう。国立極地研究所に問い合わせると、「以前は接着剤を使っていたが、今回は毛を剃った上で“特殊なテープ”で留めてある」とのこと。気になる生態への影響については、「環境省にも確認申請を出しているので問題ない」とし、剃った毛についても「定期的に生え替わるものなので負担はない」という。
 
 だがこの極地研の説明に異を唱える人もいる。筆者の知人で元観測隊員の一人は「マイナス50度という過酷な環境において、身を守るための毛を剃ったらどうなるか。調査の名を借りた虐待ですよ。生態の保護をうたった南極条約にも抵触するのではないか」と厳しい。本件についての“真偽”は分からないが、ニュースは表層だけでなく、その裏もしっかり見なければならないとあらためて感じた次第である。